日本のホラー表現には、独特の静寂と余白がある。中田秀夫監督が手がけた金字塔的映画『リング』で描かれた貞子の這い出る描写は、見る者の網膜に消えないトラウマを焼き付けた。あのヌルリとした不条理な恐怖の遺伝子は、現代のデジタル怪談にも色濃く受け継がれている。
一方で、伝統的な日本の怪談を長年にわたり牽引してきた稲川淳二の語り芸は、情景を頭の中に思い浮かべさせる「聴覚的ビジュアル」の極致だった。いま、その視覚的恐怖のバトンは言葉を介さない短尺ループへと手渡されている。語り手から画像へ。メディアの形が変わろうとも、じわじわと背筋を凍らせる日本固有の「湿り気のある恐怖」の構造は、何一つ変わっていない。