「内定承諾書にサインした後に辞退したら、損害賠償を請求されるのではないか」。こうした不安を抱える学生は少なくない。結論から言えば、複数企業への内定承諾自体が直ちに刑事罰や違法行為に問われることはない。
日本における労働契約の基本は、労働者の職業選択の自由だ。労働弁護士は「企業と学生の間で結ばれる内定は、始期付解約権留保付労働契約と解釈されるのが一般的。民法第627条の規定により、労働者は原則として2週間前までに告知すれば自由に契約を解約できる」と指摘する。つまり、内定承諾書や添え状を提出した後であっても、入社意志を撤回する権利は法的に保障されている。
厚生労働省のガイドラインでも、企業側が学生に対して内定辞退を理由に過度な脅迫や不当なプレッシャーを与える行為(いわゆるオハラ=おわれハラ)は厳しく制裁される対象となる。ただし、法的に問題がないからといって、入社直前での一方的な破棄や悪質な嘘を伴う辞退まで無条件に許されるわけではない。入社にあたって特殊な備品や研修費を個別支出していた場合など、極端なケースでは信義誠実の原則に反したとして損害賠償請求のリスクが発生する可能性がある。