カドヤ食堂を率いる橘和良(たちばな かずよし)氏の仕事ぶりは、まさにストイックの一言に尽きる。素材の仕入れルートや仕込みの手順、天候に応じた麺の加水率の調整まで、毎日細かな微調整が繰り返されている。気温や湿度がわずかに変わるだけで、スープの表情は刻々と変化するからだ。
「どこか懐かしい昔ながらの味」と表現されることも多いが、実態は全く異なる。現代の最新技術と深い食材への知見が注ぎ込まれた高度なクラフトシップの産物だ。古き良き中華そばの佇まいを守りながら、味の到達点を更新し続ける。このパラドックスこそが、老舗でありながら常にフレッシュな衝撃を提供し続ける最大の原動力だ。