天文学や錬金術の世界で使われていた星の記号が、なぜ生き物の雄と雌を示す標識へと転じたのか。その決定的な転換点を作ったのが、18世紀スウェーデンの博物学者カール・フォン・リンネである。
「分類学の父」として知られるカール・フォン・リンネは、1753年に発表した著書『植物の種(Species Plantarum)』をはじめとする数々の論文で、植物の雄花と雌花を簡潔に記載するための手書きの略号として「♂」と「♀」を導入した。それまで文章で長々と書かれていた性別記述を、たったひとつの記号に置き換える手法は、当時の学術界に革命をもたらした。
やがてこの記号体系は植物学の枠を超え、動物学や医学を含めた生物学全般へと急速に広まっていく。複雑な観察記録を瞬時に識別できる合理性こそが、世界中の研究者に愛用された最大の理由だった。