近年の音楽シーンにおける最大のエポックメイクは、90年代J-POP再評価の文脈が単なるノスタルジーを越えた点にある。とりわけ、ソウルやR&B、フュージョンを背景に持ったサウンドプロダクションは、ハイレゾ音源や高音質ストリーミングの普及によってその真価を問われ直している。ニューヨークやロンドンの名プレイヤーを起用して制作された当時のトラック群は、今日のプロダクションと比較しても信じられないほど贅沢な空気感を纏っている。
ストリーミングのプレイリストをきっかけに彼女の楽曲へ辿り着いた若いリスナーからは、「シティポップの煌びやかさとは一線を画す、しっとりとした大人のグルーヴが心地よい」という声が相次ぐ。タイムラインを流れる情報消費の速さに疲弊した人々にとって、余白と気品に満ちたその音像は、贅沢なチルアウト・ミュージックとして機能しているのだ。