箭弓稲荷神社の境内を歩いていて見逃せないのが、社殿の彫刻美と並ぶ巨大なモニュメントです。平成28年(2016年)、御鎮座1300年を記念して奉納された「巨大木製朱印印章」は、高さ1.42メートル、印面1.30メートル四方、総重量約420キログラムという規格外のスケールを誇ります。この建造物は「最も大きな木製スタンプ(Largest wooden stamp)」として、ギネス世界記録に正式認定されました。
授与所でいただける通常の御朱印や、春の「ぼたん祭」期に頒布される限定御朱印にも、この意匠や牡丹の印が美しく押印され、コレクターの間で極めて高い評価を得ています。
さらに注目すべきは、勝負事だけでなく芸能の神としても名高い点です。江戸時代後期、七代目市川團十郎は当神社に篤い帰依を寄せ、江戸歌舞伎界随一の大名跡「成田屋」の興行成功を祈願し続けました。文政4年(1821年)には自ら扁額を奉納しており、本殿の精緻を極めた彫刻群とともに、松山宿の文化水準の高さを示す重要文化財として今に受け継がれています。野球ファンのみならず、芸能関係者や表現者が舞台の成功を祈願しに訪れる背景には、この200年を超える梨園との確固たる絆が存在します。