大和文華館を訪れた鑑賞者がまず息をのむのは、周囲の自然環境と絶妙に調和した建物の佇まいです。設計を担当したのは、文化勲章受章者であり近代数寄屋建築の第一人者として知られる建築家・吉田五十八。外観は桃山時代の城郭や土蔵を思わせる白壁と、腰部分に施された海鼠壁(なまこかべ)風の意匠が印象的で、重厚でありながら軽やかな近代建築の洗練を感じさせます。この優れた意匠設計により、1960年の開館翌年には日本建築学会賞を受賞しました。
館内に足を踏み入れると、中央に配された開放的な中庭(竹の坪庭)が目に飛び込んできます。トップライトから降り注ぐ柔らかな自然光が青々とした竹を照らし、その周囲を回廊式に展示室が巡る構造になっています。外の自然光を直接展示室に入れない工夫を凝らしつつ、回廊を移動する瞬間に坪庭の自然を感じさせる動線設計は、鑑賞者の視覚的な疲労を和らげる効果をもたらしています。
さらに展示ケースの床面には畳敷きが採用され、掛軸や屏風、陶磁器が本来置かれていた日本家屋の目線に近い高さで鑑賞できるよう計算されています。敷地南側に広がる日本最古級のため池とされる「蛙股池」の自然景観を巧みに取り込んだアプローチの階段やテラスの配置も含め、建物全体が一つの芸術作品として完成されています。