物語の始まりは飛鳥時代にさかのぼる。修験道の開祖として知られる役行者が、大峯山での厳しい修行中に創製したという伝説が今も語り継がれている。苛酷な山岳修行に耐える山伏たちが、腹痛や疲労を和らげるために服用したのがその原点だ。
主な産地として知られるのが、豊かな自然と霊峰を擁する奈良県吉野郡天川村だ。修験者たちが全国へと旅立つ際、この薬を携えて下山し、各地でその効能を伝えたことで評判が広がった。お経である「陀羅尼」を唱えながら煮詰めて作ったという由来が示す通り、かつては精神的な救いと身体的な効能が分かちがたく結びついた存在だったのである。