タタラ場を統率する冷徹かつ情に厚いリーダー、エボシ御前。彼女は単に山林を切り拓き、シシ神の首を狙う野心家ではない。売られた女性たちを買い取り、居場所のないハンセン病患者たちに食事と職を与え、高度な兵器開発という重要な役割を委ねた人物でもある。
エボシ御前の真の狙いは、既存の権力構造や差別的な宗教観に支配された人間社会への挑戦であった。病者や女性といった社会的弱者を包摂し、自立した経済・軍事都市を作り上げることで、神や武士階級からの自立を果たそうとしたのだ。彼女の選択は一見すると強権的であり、自然を破壊する悪のようにも映る。しかし、病に苦しむ者たちにとって、エボシ御前はまさに唯一無二の救済者であり、生きる希望そのものであったと言える。