スペインの巨匠フランシスコ・デ・ゴヤが遺した連作の中でも、ひときわ異彩を放つのが『魔女の安息日』(1798年、および黒い絵シリーズの1821–1823年作)です。暗闇の中、巨大な雄ヤギの姿をした悪魔を取り囲む女たち。彼女たちは幼児を生贄として差し出し、狂気と熱狂の入り混じった虚ろな視線を宙に漂わせています。
西洋美術史において「サバト」とは、魔女たちが夜間に集い、悪魔崇拝や黒魔術の儀式を執り行う背徳的な宴とされてきました。しかし、ゴヤがこのおぞましい光景を描いた真の目的は、オカルトを描写することそのものではありませんでした。当時のスペイン社会に根強く残っていた迷信への盲信、啓蒙思想を拒み続ける民衆の無知、そして異端審問所が振りかざす理不尽な権力への痛烈な風刺だったのです。
ゴヤは友人への書簡や素描集のメモにおいて、理性が眠るときに怪物が生まれることを繰り返し警告していました。名画に描かれた儀式のグロテスクさは、悪魔の力ではなく、人間の狂気そのものを告発しています。