日本における本格イタリアンの草分けである「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」の落合務シェフをはじめ、多くの料理人がパスタにおける「乳化」と「旨味の相乗効果」の重要性を説いてきた。絶望のパスタは、まさにその理論の極致を体現している。
日本パスタ協会が提唱するアルデンテの食感はもちろんのこと、この料理の真髄はグルタミン酸とグアニル酸の重層的なレイヤーにある。じっくり炒めたシイタケやシメジから抽出されるキノコの旨味成分、トマトの酸味、そして黒オリーブの油分と塩気。これらが生クリームの乳脂肪分によって完璧に包み込まれ、舌の上に長く残り続ける強烈なコクを作り出している。