中尾彬の真骨頂は、悪役からコミカルな教頭役までを縦横無尽に行き来するその圧倒的な演技力にあった。テレビのサスペンスドラマでは、腹に一物ある冷徹な黒幕や一癖ある刑事を熱演。彼の鋭い視線と絶妙な間合いの取り方は、茶の間の視聴者を恐怖と緊張感で包み込んだ。
その一方で、社会現象となったドラマ『GTO』で見せた内山田教頭役は、彼のキャリアにおける大きな転換点となる。愛車のベンツを何度も破壊されながらも生徒たちに翻弄される哀愁漂う教頭像は、若い世代から絶大な支持を集めた。シリアスな演技で培った確かな土台があるからこそ、あの突き抜けたコメディ演技が成立していたのだ。