柳宗悦の美学を語る上で欠かせないのが、長男であるインダストリアルデザイナー・柳宗理(やなぎ むねみ)との関係性です。名作「バタフライスツール」や使いやすさを極めたステンレスケトルなど、日本のプロダクトデザインを世界水準へと押し上げた宗理ですが、若き日は父の民藝思想に強い反発を抱いていました。
宗理は東京美術学校(現・東京藝術大学)で西洋絵画を学び、ル・コルビュジエら近代建築・モダンデザインの合理主義に傾倒します。父・宗悦が愛した古い手仕事の世界を「過去の遺物」と捉え、あえて機械化と工業生産の道を選んだのです。家庭内でも親子の間には独特の緊張感が漂っていました。
しかし、宗理が自らのデザイン事務所を構え、使う人の手や動作に徹底的に寄り添うものづくりを追求するにつれ、二人の思想は劇的な共鳴を見せ始めます。「実際に手で模型を削り出し、使ってみて美しさを探る」という宗理の手法は、父が説いた「用の美」そのものでした。手仕事と機械生産という手法の違いこそあれ、父の情熱は息子の手によって「現代のプロダクトデザイン」へと見事に再定義され、宗理自身も晩年は日本民藝館の第3代館長を務めることになります。