楽曲のリリースと同時に大きな話題を呼んだのが、庵野秀明監督が自らディレクションを手掛けたミュージックビデオ(MV)の存在です。
当時、世界的な渡航制限下にあったため、庵野監督は宇多田ヒカルに対し「ノーメイクに近い自然な状態で、スマートフォンを用いて自撮りした映像を送ってほしい」とリクエスト。宇多田ヒカルがロンドンの公園や自宅周辺で撮影した飾らない日常のフッテージを、庵野監督が日本で細かく編集・カラーグレーディングして仕上げるという異例の手法が採られました。
そこに映し出されているのは、ロックスターや歌姫としての偶像ではなく、風に吹かれ、カメラに向かって微笑み、時に寂しげな眼差しを向ける「一人の人間」の姿です。アニメーションという究極の人工美を突き詰めてきた庵野監督が、実写の宇多田ヒカルから引き出した生々しいドキュメンタリー性は、楽曲の持つ親密さと切なさを何倍にも増幅させました。