「お客様の安心を脅かす行為には、断固として立ち向かう」。くら寿司を率いる田中邦彦社長の言葉には、創業以来のプライドと危機感が滲み出ていた。企業がブランドイメージの毀損を恐れて内密に和解を図るケースは珍しくない。しかし、田中社長が選んだのは徹底抗戦の道だった。
刑事告訴に続き、莫大な設備改修費や営業損害を算定した損害賠償請求の検討を即座に発表。この妥協なき姿勢は、場当たり的な謝罪で幕引きを図ろうとしていた模倣犯たちへの強烈な牽制となった。一企業の枠を超え、産業全体のモラルを守るための決断。それは卓越したクライシスマネジメントの実例として経済界からも高く評価されることとなった。