ネット上の言論やSNSでは、「コーヒー豆が高くなったのは日本の円安が原因だ」「為替が円高に戻れば昔の価格に戻る」という言説が散見されます。しかし、商品先物市場の専門家や商社の調達担当者は、この見方を「危険な誤認」だと指摘します。
為替要因はコスト押し上げの一因に過ぎず、本質は世界規模での絶対的供給不足と需要構造の激変にあります。特に見落とされがちなのが、中国をはじめとする東アジア諸国でのカフェ文化の爆発的普及です。これまで紅茶や緑茶が主流だった巨大市場においてコーヒー消費量が年率二桁成長を記録しており、世界的な豆の争奪戦が激化しています。さらに、投機筋によるコモディティ市場への資金流入、欧州での森林破壊防止法(EUDR)施行に伴う流通コンプライアンス費用の増大など、複数のコスト圧力が同時にかかっています。
したがって、「為替が一時的に円高へ振れたとしても、コーヒー豆が数年前の水準まで安くなることは構造上あり得ない」というのが業界の一致した見解です。