メディアや高校野球ファンから野々村監督が「やくざ監督」と呼ばれた理由は、その型破りなビジュアルと立ち振る舞いにありました。甲子園の抽選会や開会式に白のダブルスーツ、柄シャツ、サングラス姿で現れ、短く刈り込んだヘアスタイルと凄みのある表情は、高校野球の「清貧・爽やか」というステレオタイプを真っ向から打ち破るものでした。
しかし、その強烈なパブリックイメージの裏にある決定的な事実は、彼が「高校の美術科教諭」であったという点です。広島大学教育学部美術科を卒業した野々村氏は、卓越したデッサン力と色彩感覚を持つ本物の芸術家であり、校長室や部室に掲げられた力強い書や絵画はプロ顔負けのクオリティを誇ります。
グラウンドで見せる厳格な規律指導と、アトリエで見せる繊細な観察眼。この二面性こそが野々村氏の最大の魅力であり、選手のわずかな表情の変化や心理的な動揺を瞬時に見抜く卓越した洞察力の源泉となっていました。