栗花落カナヲの成長譚もまた、本作の白眉である。虐待によるトラウマから感情を失い、コインの裏表でしか意思決定ができなかった少女が、自らの意志で呼吸を学び、仲間のために命を懸ける。彼女が自分の意志で「目を開く」瞬間は、一人の人間としての自立を見事に描き出している。
一方で、医師であり鬼でもある珠世の存在も忘れてはならない。数百年にわたる無惨への復讐心を、医学と科学という知性に昇華させた彼女の闘いは、力と力のぶつかり合いとは異なる次元の興奮をもたらす。暴力ではなく、知恵で巨悪の根城を揺るがす姿は、もう一つの「強さ」の定義を示している。