この大邸宅を築き上げた主は、大和証券や現在の野村ホールディングスの基盤を造り上げた実業家、二代野村徳七(号・得庵)である。茶人としても深く風流を解した彼は、自らの理想郷を現実の空間として具現化するために、惜しみない資金と並々ならぬ情熱を傾けた。
建設にあたっては、当時の最高峰といわれた造園業と建築業の技術集団が結集した。細部に至る木材の選定、石の配置、水流の落差に至るまで、徳七自身の厳しい眼差しのもとで設計が進められた。数々の職人たちが一ミリの妥協も許さず技巧を凝らした成果が、今もなお色あせることなく邸内に息づいている。