80年代にかけて加藤和彦が打ち出したソロワークス、いわゆる「ヨーロッパ三部作」(『パパ・ヘミングウェイ』『ベル・エキセントリック』『あの頃、マリー・ローランサン』)は、今や世界的なシティポップブームの金字塔として崇められている。バハマのコンパス・ポイント・スタジオやパリでのレコーディングを敢行し、一流のミュージシャンを配して作られたサウンドは、あまりにも優雅で洗練されていた。
美食、ファッション、ワイン、海外旅行。ライフスタイルそのものを芸術へと昇華させた加藤の立ち振る舞いは、当時の日本の音楽業界において異彩を放っていた。単に曲を作るだけでなく、人生の愉しみ方そのものを音符に変換してみせる贅沢さ。それこそが、現在の海外リスナーをも魅了してやまないシティポップの美学そのものだった。