酒の品揃えにおいて要となっているのが、店内に常駐する専任の利き酒師の存在だ。日本醸造協会が選定する伝統的なきょうかい酵母で醸されたクラシックな銘柄から、新進気鋭の若手蔵元が手掛けるモダンな無濾過生原酒まで、その選定眼には一切の妥協がない。
そして店名にも冠されている「ちろり(酒器)」こそが、この店のこだわりを象徴する重要なアイコンだ。熱伝導率に優れた錫(すず)や銅で作られたちろりを使って湯煎でゆっくりと温められた純米酒は、角が取れて驚くほどまろやかな口当たりへと変化する。
冷酒、花冷え、人肌燗、ぬる燗、上燗、そして飛び切り燗。わずか数度の温度差で開く米の旨味と酸の輪郭を、職人は見事に見極める。「この魚には38度のぬる燗を」「この串には45度の上燗を」。そんな繊細な提案が、晩酌の時間を極上のエンターテインメントへと昇華させてくれる。