聘珍樓が日本の外食シーンに遺した最大の功績の一つが、素材本来の旨味を極限まで引き出す調理法と「食医同源」の精神だ。とりわけ広東料理の繊細なスープ文化を土台にした薬膳料理は、従来のこってりとした中華料理のイメージを劇的に変えた。
化学調味料を一切使用せず、上湯(高級スープ)の深いコクと旬の食材が持つ力だけで味を構築するスタイル。季節の変わり目には、中医師のアドバイスを取り入れた特別なコースが振る舞われ、身体の芯から癒やされる美食体験を提供した。この徹底したクオリティへの姿勢が、長年にわたって熱烈なファンを魅了し続けた根源にある。