かつて日本中が固唾をのんで見守った新型コロナウイルス感染症対策専門家会議において、科学的根拠に基づく政策提言の要を担ったのが、尾身茂氏をはじめとする専門家たちであった。その議論の場で、臨床データと公衆衛生学を架橋する実務派として強い存在感を示したのが和田氏だ。
政治と科学、そして国民へのリスクコミュニケーションが複雑に交錯する中で試行錯誤された経験は、現在の感染症危機管理庁の創設や法整備へと確実に受け継がれている。未知の脅威に対し、完全なデータが揃わない段階でいかに最善の意思決定を下すか。当時の葛藤と検証のプロセスは、未来の感染症対策における貴重な遺産となっている。