国内にはかつて数万を数えた城館が存在しましたが、天守が現存しているのは全国でわずか12城(現存十二天守)に過ぎません。その中で国宝の栄誉を担うのは「姫路城」「松本城」「犬山城」「彦根城」「松江城」の5城です。残る7城(弘前城・丸岡城・備中松山城・丸亀城・伊予松山城・宇和島城・高知城)は、いずれも国の「重要文化財」に指定されています。
文化財保護法において、重要文化財の中から「有形文化財のうち製作が極めて優秀で、かつ、文化史的意義の特に高いもの」が国宝に指定されます。城郭建築における選定基準は極めて厳格であり、単に「古くて美しい」だけでは決して到達できません。決定打となるのは、天守構造の独創性・類例の少なさ・往時の部材の残存度、そして何よりも築造時期を客観的に証明する一次資料の存在です。
象徴的な事例が松江城です。同城は戦前の一時期、旧国宝に指定されていましたが、戦後の法改正に伴い重要文化財へ見直されました。国宝再指定への道を切り拓いたのは、2012年に城内の松江神社で発見された「慶長十六年」の年号が記された2枚の祈祷札でした。天守地階の通し柱に残された釘穴の位置と祈祷札の寸法・痕跡がミリ単位で一致したことで、慶長16年(1611年)完成という決定的な動かぬ証拠となり、2015年に悲願の国宝指定を果たした経緯があります。