古典落語『道具屋』の構造は、極めてシンプルだ。定職に就かずぶらぶらしている与太郎が、叔父さんの勧めで古道具の露店商を始める。しかし、並べられた商品はまともな品など一つもない。客が来ては難癖をつけ、与太郎は叔父から教わった売り文句を適当に当てはめては墓穴を掘る。
この作品が数ある滑稽噺の中でも別格の存在感を放つのは、悪意の不在にある。騙してやろうという狡猾さではなく、ただ純粋に物事をありのまま捉える与太郎のボケっぷり。そして、それに調子を狂わされながらもどこか付き合ってしまう客の人間臭さ。古典落語が何百年にもわたって磨き上げてきた対話の妙が、わずか十五分ほどの高座の中にぎっしりと詰まっている。