ビジネスマナー書が推奨する美辞麗句と、実際のオフィスで飛び交うコミュニケーションの間には、どのような温度差があるのでしょうか。大手通信企業や金融機関、ITスタートアップなどを対象にした業務コミュニケーションの実態データをもとに検証します。
大手調査機関が実施した「ビジネスメールの定型表現に関する意識調査(サンプル数1,200名)」によると、メールの結びにある「ご指導のほどよろしくお願いいたします」に対して、約86.4%の管理職・取引先担当者が「好印象、または特段の違和感はない」と回答しています。「形式的すぎて冷たさを感じる」と答えた割合は9.2%にとどまり、「マナー違反として不快感を覚える」と回答した層はわずか1.8%に過ぎませんでした。
現場で実際に交わされる声からは、次のような現実が浮き彫りになっています。
「毎日数十通の報告メールを受け取る中で、結びに『ご指導のほど〜』とあれば、謙虚に仕事に向き合っている姿勢が自然と伝わる。形式的ではあっても、外す理由が見当たらない」(50代・製造業役員)
「何でも『ご指導ご鞭撻』と書いてくる新人がいるが、社内チャットや日常の軽微な相談で使われると、少し大げさに感じる。『ご指導のほど』くらいが、社内でも社外でも一番座りがいい」(30代・IT企業マネージャー)
一方で、SNSや社内匿名チャット等で若手社員から寄せられる率直な意見には、「何を指導してほしいのか自分でも分からないまま、習慣として打ち込んでいる」「指導を仰ぐつもりのない事務連絡の末尾に付けることに抵抗がある」といった戸惑いも見られます。形骸化したコピペ送信が、書き手の思考を停止させている側面は否定できません。