現在の建物内を歩くと、かつての暴力団事務所時代とは異なる、異質な不穏さが漂っている。ポストには宛名のないチラシが溢れ返り、表札の代わりに殴り書きのコード番号が貼られたドアも目立つ。独自取材に応じた40代の男性住人は、煙草の煙を吐き出しながら驚くべき内情を明かした。
「組の看板が降りたから平和になったなんて大間違いですよ。今は誰が隣に住んでいるのか誰も知らない。トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)の受け子のアジトになっていたり、違法オンラインカジノのサーバールームになっていたりする。夜中に突然、怒号とともに何人もの男が逃げ出してくる音を聞くのは日常茶飯事です」
2026年の治安データを検証すると、凶悪な発砲事件などは激減したものの、不法滞在者や特殊詐欺グループによる密室型犯罪の温床となっている実態が浮かび上がる。家賃の安さと審査の緩さに惹かれて流入した外国人労働者や風俗関係者、身元を明かせない訳ありの住人たちが、互いに干渉することなく不気味な均衡を保っているのだ。ある部屋の前には盛り塩が放置され、別のドアノブには真新しい南京錠が外側から掛けられている。この異様な光景こそが、危険物件が辿り着いた現在のリアルだ。