市場の魚屋に並ぶカツオの皮目は、鏡のように美しく光り輝く。一般的なスーパーや大型観光施設で見かける冷凍解凍品の肉質とは、包丁を入れた瞬間のねっとりとした吸いつきがまるで違う。ここ久礼では、冷凍処理を一度も施さない「生」のカツオしか売らないという鉄の掟が存在するのだ。
注文が入ると、職人がその場でカツオを捌き、ゴウゴウと音を立てる豪快な藁の炎にかざす。表面だけを瞬時に炙り、香ばしい藁の煙を肉に纏わせる。分厚く切られたタタキに粗塩を振り、生ニンニクのスライスを添えて口へ運ぶ。噛んだ瞬間に広がる濃厚な旨味と爽やかな脂の甘み。もはや醤油すら不要なほどの衝撃が、訪れた者の味覚を支配する。