ここで一度、ネット上に流布している大きな誤解を整理しておく必要があります。最も多い勘違いは、「スタジオジブリの公式セリフ、あるいは公式台本にそのフレーズが存在する」という思い込みです。
『風の谷のナウシカ』の原作漫画(全7巻)および劇場版アニメの全編を精緻に検証しても、「風の様子が変なのだ」という台詞は一度も登場しません。劇中で語られるのは、あくまで「大気が怒りに満ちておる」「風がやんでしまった…」「風がおかしい…森がざわめいている」といった厳粛な言葉遣いです。語尾に「なのだ」を付けるようなキャラクターは風の谷には一人もいません。
また、ずんだもんの公式設定(SSS合同会社)においても、台風に言及するような固定の公式セリフとして用意されているわけではありません。人間は、複数の断片的な記憶(ナウシカの風に関するシリアスな台詞、アライさんやずんだもんのキャッチーな語尾、台風接近時の異常な風音)を無意識に頭の中で合成し、最初からそういう台詞が存在したかのように錯覚してしまうことがあります。これは認知心理学で「マンデラ効果(集合的記憶の錯誤)」と呼ばれる現象の一種であり、ネットミームが自然増殖していく過程で非常によく見られるパターンです。