モノを買うだけの場所なら、スマートフォンの中にすべて揃う。そう割り切った天満屋が打ち出したのは、五感を揺さぶる体験空間への全面刷新だった。数度にわたるフロア構造の見直しを経て、現在の店内には単に商品を並べた棚は存在しない。工藝作家の制作風景を間近で眺められるオープンスタジオや、瀬戸内の自然を感じさせるグリーンテラスなど、滞在すること自体が目的となる仕掛けが散りばめられている。
さらに注目すべきは、店舗の壁を越えた取り組みだ。隣接する表町商店街との境界線を事実上取り払い、館内の回遊がそのまま歴史あるアーケード街の散策へとつながる動線が設計された。百貨店単体で囲い込むのではなく、街全体をテーマパークに見立てる発想の転換。この大胆なアプローチが、若い世代やファミリー層の足足を再び中心市街地へと呼び戻している。