重厚でヒリヒリとした痛みが続く本作において、観客と夏芽にとって唯一の救いとなったのが、重岡大毅(WEST.)演じる大友勝利の存在です。
事件によって心を閉ざし、モデルの仕事もできなくなった夏芽に寄り添い、太陽のような明るさで日常を取り戻させた大友。バッティングセンターでの不器用な励ましや、夏芽の眉毛を整える微笑ましいシーンは、重岡の持つ天性の人懐っこさと誠実さによって、映画屈指の心温まる名場面となりました。
全17巻に及ぶジョージ朝倉の原作漫画と比べ、映画版は約111分という限られた尺の中で物語を再構築しています。原作ではより詳細に描かれる大友との交際期間や、事件後のコウの長い放浪生活、東京での夏芽のモデルキャリアの葛藤などが映画では大胆に凝縮されています。山戸監督はストーリーの全貌を追うことよりも、コウと夏芽の間にある「純度の高い引力と痛み」に焦点を絞り、詩的でエモーショナルな映像美を最前線に押し出しました。