水槽ガラス面を滑空するエイを観察していると、下腹部に小さな足のような突起がパタパタと動いているのが目に入ります。「エイには足が生えているのか?」と疑問を抱く来館者も少なくありませんが、この部位の正体は「腹鰭(ふれき)」です。
エイは軟骨魚類に分類され、巨大な胸鰭(むなびれ)を波打たせて水中を優雅に羽ばたくように泳ぎます。その推進力を細かく制御し、海底に着底する際のスタビライザーとして機能するのが腹鰭です。浅瀬を這うように移動する際、この腹鰭を交互に動かす様子がまるで人間が歩いているように映るため、「足が生えている」と形容されるようになりました。
さらに、この腹鰭付近を注視することでオスメスの見分け方が一目で分かります。成熟したオスのエイには、左右の腹鰭の内側に沿って2本の棒状の器官が伸長しています。これは「クラスパー(交尾器)」と呼ばれる軟骨でできた繁殖用の器官です。一方でメスにはこの突起が存在せず、丸みを帯びた平らな腹鰭のみとなっています。水族館で2匹以上のエイを見比べた際、尾の付け根付近に2本の細長い突起が確認できればオス、すっきりしていればメスと即座に判断できます。