近年の健康トレンドにおいて散見される最大の誤解が、「糖質さえ制限すれば、肉やバター、オイルはいくら食べても健康になれる」という過激なケトジェニック志向です。確かに糖質を断てば一時的にインスリン分泌量は減少し、見かけの血糖値は安定します。しかし、その代替エネルギーとして脂質を大量に摂取すると、膵臓のリパーゼ分泌負荷は極限まで高まります。
医療現場の症例報告では、過度な高脂質ダイエットを開始した直後に急性膵炎を発症したり、血中中性脂肪が急増して膵酵素値が跳ね上がったりするケースが報告されています。良質とされるオリーブオイルやMCTオイルであっても、油である以上リパーゼの分泌を促す点に変わりはありません。
血糖値を急上昇させない食べ物を取り入れる際の本質は、極端な糖質ゼロを目指すことではなく、「食物繊維を先に食べる(ベジファースト)」「未精製の穀物(玄米・大麦・オートミール)を選ぶ」「よく噛んで唾液アミラーゼを分泌させ、膵アミラーゼの負担を肩代わりさせる」という消化器全体の協調動作を成立させることにあります。