スピリチュアルな側面だけでなく、近年の睡眠医学や神経科学の進歩によって、悪夢と吉夢のメカニズムは生理学的な観点からも解明が進んでいます。
私たちが鮮明なストーリー性のある夢を見るのは、主に「レム睡眠(浅い眠りで脳が活発に動いている状態)」のタイミングです。このとき脳内では、記憶の保管庫である海馬と、情動や恐怖を司る扁桃体が活発に通信を行い、日中にインプットされた膨大な情報や感情の整理・統合を行っています。
ここで決定的な影響を与えるのが睡眠の質と夢の関係です。肉体疲労、就寝前の過度なカフェインやアルコールの摂取、室温の不快感、呼吸の乱れなどがあると、自律神経の交感神経が優位になります。その結果、扁桃体が過剰に興奮し、恐怖や不安を伴う記憶ネットワークが引き出されて「悪夢」として知覚されやすくなります。
反対に、副交感神経が優位でリラックスした安定した睡眠状態では、ポジティブな記憶の結びつきや穏やかな情動処理が行われ、心地よい「良夢」や安心感のある夢を見やすくなります。夢の内容は、その時の身体的コンディションや自律神経のバランスを映し出す鏡といえます。