旅の情緒を味わうなら、鉄道の旅が面白い。彦根方面から近江鉄道多賀線に揺られ、終点の多賀大社前駅へと向かうローカル線の車窓には、鈴鹿山脈の裾野に広がる田園風景が広がる。電車がゆっくりとカーブを描くたび、都会の喧騒が遠ざかっていく。
近年、観光庁が推進する持続可能な観光まちづくりや地域資源の再評価の波に乗り、この地域にも新たな息吹が生まれている。単なる通過型の観光から、地域の歴史や食文化をじっくり味わう滞在型への転換が進み、駅周辺には古民家を活用したカフェやギャラリーが点在するようになった。ローカル列車で訪れるスロートラベルは、現代の参拝客に新たな旅の価値を提示している。