日本の刑事ドラマ史を振り返れば、服装は常にキャラクターの個性を象徴する武器だった。『踊る大捜査線』で織田裕二が演じた青島俊作のミリタリー調モッズコートや、『相棒』で水谷豊演じる杉下右京が着こなすクラシックなブリティッシュスーツにサスペンダー姿は、今なお視聴者の記憶に鮮烈に焼き付いている。
しかし、実際の現場捜査官がモッズコートを着て張り込みを行えば、防犯意識の高まった現代の都市部では一瞬で不審者として通報されかねない。また、サスペンダーやタイトな仕立ての高級スーツは、突発的な格闘や全力疾走が求められる局面で著しく身体の自由を奪う。
ドラマが描くアイコンはあくまで視聴者の視線を引きつけるための記号であり、現実の捜査官が目指すのは「10秒後にすれ違った通行人が、どんな服を着ていたか思い出せない」レベルの無個性さなのだ。