ドキンちゃんの声優交代の直接的な理由は、初代を務めた鶴ひろみさんの急逝です。2017年11月16日夜、首都高速道路上に停車していた車内で意識不明の状態で発見され、大動脈解離のため57歳の若さで帰らぬ人となりました。突然の悲報は日本中に衝撃を与え、共演者やスタッフだけでなく全国のファンが深い悲しみに包まれました。
鶴さんが演じたドキンちゃんは、ただの悪役ではなく、しょくぱんまんに純粋な恋心を抱き、時にばいきんまんを振り回しながらもどこか憎めない絶妙なニュアンスを持っていました。この唯一無二の表現は、鶴さんの卓越した演技力と人間味があってこそ成立していたものです。
制作現場にとって最も差し迫った課題となったのが、直後に控えていた年末恒例の特番『コキンちゃんとクリスマスのおくりもの』(2017年12月22日放送)のアフレコでした。収録スケジュールの猶予が一切ない極限状態のなか、立ち上がったのがバタコさん役を務める佐久間レイさんでした。
関係者の証言や当時の報道によると、佐久間さんは「鶴ちゃんが遺した思いを絶対に途切れさせてはならない」という強い使命感から緊急代役を引き受けました。放送当日、視聴者からは「言われなければ気付かないほど自然だった」「バタコさん役の佐久間さんがここまでドキンちゃんに寄り添って演じてくれたことに涙が出た」と、驚きと感謝の声が相次ぎました。