なぜ人々は冷静さを失い、不要なまでに同一の物資へ殺到したのだろうか。社会心理学の分析によれば、不確実性が高い情勢下において人間は「他者の行動を正解とみなす」社会的証明の心理に強く支配される。周囲の人間がこぞって紙を抱えて走る姿を目撃した瞬間、個人の理性的判断は吹き飛び、集団同調圧力が行動を支配する。
また、行動経済学の観点からは「損失回避バイアス」と「希少性ヒューリスティック」の掛け合わせで説明ができる。「手に入らなくなるかもしれない」という恐怖による心理的損害は、冷静に在庫状況を分析する利益をはるかに上回る。たとえ自宅に十分なストックがあっても、「今買わなければ損をする」というインセンティブが働き、結果として誰もが買い占め行為に加担することになるのだ。