長年変わらない夜空のシンボルに見える月ですが、精密な観測により毎年約3.8cmずつ地球から遠ざかっていることが証明されています。この数字は人間の爪が伸びるスピードとほぼ同じです。
この驚くべき事実が判明したのは、アポロ計画の宇宙飛行士たちが月面に設置してきた「レーザー反射板(再帰反射器)」のおかげです。地球の天文台から発射した強力なレーザー光が月に届き、反射して戻ってくる往復時間をミリ単位で計測することで、距離の微小な変化が正確に割り出されました。
月が離れていく根本的な原因は、月と地球の間で働く「潮汐力(ちょうせきりょく)」にあります。
月の引力によって地球の海水は引っ張られ、満ち引き(潮汐)が起こります。しかし、地球は月が公転するスピード(約27日)よりもはるかに速いスピード(1日1回転)で自転しているため、海水が盛り上がった場所(潮汐バルジ)は月の正面よりも少し前方に引きずられます。
この前方へズレた海水のかたまりが月を前方へと引っぱるため、月の公転速度にエネルギーが与えられます。物理学の「角運動量保存の法則」に従い、エネルギーを得た月は徐々に外側の軌道へと押し出され、年間3.8cmのペースで地球から離れていくのです。
同時に、海水と海底の摩擦によって地球の自転にはブレーキがかかっており、地球の1日の長さは10万年で約1秒〜2秒ずつ長くなっています。恐竜が生きていた白亜紀の地球では、月はもっと大きく空に見え、1日は約23時間程度だったと推定されています。