激しい事業承継・委任状争奪戦の裏には、急変する市場環境と経営思想の根本的な乖離が存在していた。旧株式会社大塚家具が長年誇ってきたのは、専任アドバイザーが顧客に同行し、コンサルティングを行う高価格帯の販売手法である。
しかし、ニトリやイケアをはじめとする低価格・セルフサービス型のインテリアチェーンが急成長する中で、経営陣の意見は二分された。久美子氏は手軽に立ち寄れるオープンな店舗作りとコストカットを重視したが、勝久氏と勝之氏は「使い捨ての家具ではなく、一生ものの価値を提供する」という創業精神を譲らなかった。
この二つの対立するビジョンが激突した結果、株主を巻き込んだ泥沼の争いへと発展した。勝之氏は父の横で静かに、しかし力強くその理想を具現化するための実務を担い続けた。その姿勢は、職人や長年の顧客からの厚い信頼を繋ぎ止める大きな要因となった。