日本国内でタクティールケアの名が爆発的に認知された契機は、NHKスペシャル『認知症革命』の放映だった。興奮して暴力を振るったり、大声を上げ続けたりしていた認知症患者が、スタッフの手によるタッチケアを受けた途端、嘘のように穏やかな表情を取り戻す様子は、医療・介護関係者に強烈な衝撃を与えた。
それまで日本の認知症ケアでは、不穏行動や徘徊に対して抗精神病薬や身体拘束に頼らざるを得ない場面が少なくなかった。しかし、タクティールケアの導入は「薬に頼らずとも情動を安定させられる」というパラダイムシフトをもたらした。
現在、国内の介護・福祉医療産業では、特別養護老人ホームやグループホームの標準ケアプランにタクティールケアを組み込む施設が急増している。ケアを受けた当事者のBPSD(行動・心理症状)が劇的に改善するだけでなく、触れている介助者側のオキシトシン濃度も上昇するため、介護職のバーンアウト(燃え尽き症候群)防止にも明確な効果を上げている。