宮崎駿監督は、自身の作品において性描写を直接的に表現することを避ける傾向がある。しかし、その裏には極めて濃厚な「性のメタファー」が隠されていることが多い。『千と千尋の神隠し』における湯屋の構造や、『風立ちぬ』における夫婦の夜のシーンがその代表例だ。
『もののけ姫』の絵コンテを詳細に分析すると、アシタカがサンに小刀を手渡すシーンの後、二人の距離感は物理的にも精神的にも急速に縮まっている。エミシの村において、小刀を女性に贈る行為は「婚約」や「生涯を共にする誓い」を意味する。つまり、あの小刀の受け渡しは、単なるプレゼントではなく、実質的な求婚であり、それに同意したサンとアシタカの間で、大人の関係が結ばれたと解釈するのが自然だという指摘だ。