行政文書や公的な告示において、どちらの表記を標準とするかは明確に規定されている。文化庁が管轄する常用漢字表において、「十」の項目には「じゅう」という音訓とともに「満ち足りている」という意味合いが含まれる。これに基づき、国の行政機関が作成する公用文では「十分」を用いるのが公式の表記原則だ。国語学・日本語表記ルールの観点からも、公的な場での統一性を保つために「十」を用いることが推奨されてきた。
一方で「充分」という表記が消えたわけではない。副詞的に用いる「充分に配慮する」といった表現において、「充」の持つ「満たす」という字義が心理的にしっくりくると感じる書き手も多い。しかし、公用文の作成ガイドラインにおいては、表記の揺れを極力なくし、誰もが迷わずに読める簡潔さを重視するため「十分」へ統一する流れが定着している。