物語の核をなす主人公・新城直衛(しんじょう なおえ)は、決して大義名分に燃える正義のヒーローではない。自嘲的で、自尊心が低く、しかし生き残るためには他者も自分も冷酷に切り捨てるリアリストだ。
彼の真骨頂は、絶体絶命の撤退戦において発揮される。圧倒的な敵軍を前に、死地を潜り抜けるための戦術論と、人間の恐怖心を計算に入れた部隊運用。兵士を駒として冷徹に扱いながらも、その泥にまみれた背中に宿る「生き狂う熱量」が、読者の眼球を釘付けにする。この徹底した戦術的リアリズムは、フィクションにおけるミリタリー表現の到達点と言っても過言ではない。