当時の視力データ(左右0.4程度)と、その後の彼のプレイ動画を比較検証すると、視覚情報と判断スピードの相関関係が見えてくる。レーシック手術を受ける前の彼は、ボールを受ける前に首を頻繁に振り、周囲の敵や味方の位置関係をあらかじめ脳内に立体マップとして構築するスタイルを徹底していた。視力の不安定さを補うために研ぎ澄まされた空間把握能力こそが、彼の代名詞である「ため」を作るキープ力や、相手の逆をつくタテパスの精度を生み出していたのだ。
しかし、手術を経て両眼1.5以上のクリアな視界を得たことで、直感的な反応速度は飛躍的に向上した。一方で、ピッチ上の膨大な視覚情報が一気に脳へ飛び込んでくることによる調整の難しさも生じたと分析される。プレースタイルがフィジカルを前面に押し出した重厚なタメ型から、よりシャープで迅速な状況判断を求めるスタイルへと微修正されていったプロセスは、アスリートにおける視覚と運動神経の繊細なバランスを物語っている。