日本人にとって入浴とは、単なる身体の洗浄にとどまらない。古来より続く風呂文化・湯治の歴史は、湯に浸かることで心身を整え、自然のエネルギーを取り込む儀式でもあった。
漫画家のヤマザキマリ氏が手がけた大ヒット作『テルマエ・ロマエ』では、古代ローマの公衆浴場と現代日本の風呂文化が対比され、空間が生み出す癒やしのメカニズムがユーモラスかつ深く考察された。古代ローマ人が浴場建築に意匠を凝らしたように、現代の日本でも建築デザインとしての浴槽空間が再評価されている。
建築家の隈研吾氏をはじめとする世界的クリエイターが手がける宿泊施設でも、木材や石材を巧みに配し、内外の境目をあいまいにした半露天空間が見られる。自然の光や風をいかに室内に引き込むか。伝統的な湯治の精神は、最新の空間デザインと融合することで、より洗練された形で受け継がれている。