坂本龍馬の戦闘スタイルを決定づけたのが、彼が愛用した装備の合理的な組み合わせです。龍馬は精神論としての「武士の魂」に固執せず、機能性と威力を最優先に道具を選び抜いていました。
龍馬の腰にあったのは、土佐藩屈指の鍛冶師の手による名刀「陸奥守吉行(むつのかみよしゆき)」(刃長二尺二寸)です。兄・権平から贈られたこの刀は、実用本位で頑強、重ね(刀身の厚み)が厚く、乱戦での過酷な斬撃に耐えうる実戦刀でした。現存する吉行(京都国立博物館所蔵)には、後の襲撃時に敵の凶刃を受け止めた生々しい傷痕が刻まれています。
そしてもう一つ、龍馬の実戦力を象徴するのが、高杉晋作から護身用として贈られた米国製「スミス&ウェッソン(Smith & Wesson)第2モデル・アーミー 33口径6連発リボルバー」です。当時の日本で主流だった火縄銃や単発銃とは桁違いの速射性を誇り、狭い室内や暗闇の遭遇戦において圧倒的なアドバンテージをもたらしました。
巨躯を活かした重い太刀筋、間合いを自在に制するなぎなたの足捌き、そして中距離を一瞬で制圧する連発拳銃。この3つを融合させた龍馬の戦闘力は、純粋な剣道マッチではなく、「暗殺と不意打ちが日常茶飯事だった幕末京都の路上戦」において最強クラスの生存力を構築していました。