あのチャイム音の生みの親をご存知だろうか。東京大学名誉教授の難波精一郎氏ら音響学の研究チームと共に音響設計に深く関わったのは、作曲家・伊福部達(いふくべ とおる)氏だ。
「伊福部」という名前にピンとくる映画ファンも多いかもしれない。彼は、あの映画『ゴジラ』のテーマ曲を手掛けた世界的巨匠・伊福部昭氏の甥にあたる人物である。伊福部達氏は福祉工学や音響学の専門家であり、長年にわたり「人間に届く音」を研究してきた。
開発時、最も重視されたのは「高齢者や聴覚障害を持つ人にも確実に伝わり、かつ心臓への負担を過剰にかけないこと」だった。何百通りもの試作音を作成し、被験者の心電図や脳波、脳血流の変化を測定する泥臭い実験が繰り返された。そうして生まれたのが、一度聴いたら一生忘れない、あの9音で構成されるチャイム音だったのだ。