「麻酔が怖いから」という理由で、近年急速に広がったのが「無麻酔歯石除去」だ。ネット通販や一部のサロンで「麻酔なしで安心・安全」と謳われることが多いが、日本小動物歯科研究会や農林水産省などの専門機関は一貫して警鐘を鳴らしている。
無麻酔の最大の危険は、犬が恐怖や痛みに耐えかねて突然暴れることだ。ハンドスケーラーなどの鋭利な金属器具が目や口蓋、咽頭に刺さる事故が頻発している。暴れた拍子に喉を突かれ、大出血や気道閉塞を起こして死亡した例すら存在する。
さらに見過ごせないのが、精神的ストレスによるショック死だ。特に持病を持つシニア犬を力づくで保定(固定)し、長時間痛みに耐えさせると、極度の緊張と恐怖からアドレナリンが過剰分泌され、急性心不全を引き起こすことがある。「麻酔を使わないから安全」という認識は、極めて危険な誤解なのだ。