『わたがし』の最大の魅力は、情景描写の細やかさと、主人公の男子が抱く「情けないほどピュアな自意識」の生々しさにあります。全編を通して、清水依与吏の作詞作曲における観察眼とワードセンスが極限まで発揮されています。
物語の舞台は、提灯が灯る夏の夜祭り。普段とは違う浴衣姿で現れた「君」の美しさに息を呑みながらも、主人公は隣を歩くことだけで精一杯になり、手をつなぐ勇気すら出ません。「わたがし」という甘く儚く、触れればすぐに溶けて消えてしまいそうなモチーフは、二人の繊細な距離感そのものを象徴しています。
「水色にはなれない」という印象的なフレーズに象徴されるように、彼女の視線の先にあるものや、彼女の好む色にすら嫉妬し、自分を重ね合わせようとする不器用な妄想。back numberが得意とする「カッコつけきれない男のモノローグ」が、聴き手の過去の記憶や未完の恋を鮮烈に呼び起こします。